組織一体となってお客様からの信頼に応える【株式会社瑞穂鋼建】 株式会社瑞穂鋼建 代表取締役 宮川 毅彦氏
鉄骨造建築・木造建築の屋根・ 床・外壁・間仕切工事を主力事業とし、建築資材の販売施工業界の中で高い品質と対応力で40年以上の実績を積み重ねてきた、株式会社瑞穂鋼建 代表取締役 宮川 毅彦氏に事業への想いや今後の展開についてインタビューをいたしました。
(インタビューは2018年7月に行いました)
― 創業から現在に至るまでの変遷について教えてください
元々は鉄鋼商社に勤めていた父が昭和51年(1976年)に独立したのが瑞穂鋼建の始まりです。父が会社を設立したのは私が6歳の頃だったのですが、寝食を忘れるほど忙しく働いており、幼少期は父に遊んでもらった記憶はほとんどありません。
瑞穂鋼建の主力事業は、旭化成建材の建築資材の販売施工で、創業期から現在まで変わらずに継続しています。簡単に言えば、鉄骨の躯体に外壁や床、屋根を取り付ける仕事です。一棟の建築物を建てるのに必要な建築資材の販売施工業ですね。対象とする建築物は、木造の戸建てから超高層ビルまで幅広く取り扱っています。
おかげさまでお客様にも恵まれてきたため着実に業績は伸ばしてきています。ただ、父の時代に資金面で相当苦労したことはあったと聞いています。父は浅草生まれの江戸っ子で竹を割ったような性格なんです。人を信じることを信条としているため、信じていた人に裏切られて……といったこともあったようです。
先代の父は、そういった性格だったからこそ、取引先や工事の職人さんなど周りの方々から信頼されており非常に人望の厚い人でした。地道に信頼を積み重ねてきたことで40年以上会社を継続することができたのだと思います。その点では父を本当に尊敬しています。
― 40年以上継続してきた背景となる御社の強みはどこにありますか?
旭化成建材の販売店は全国で数多くあるのですが、瑞穂鋼建は出荷量は上位に入っています。ここまでの地位を築き上げてこれたのは、工事力が評価されてきたからだと思っています。
工事の品質が良いのは勿論のこと、お客様への対応や営業の提案力、引き受けた工事を自社だけで完結させることができる体制などを充実させて、責任感を持って請け負った仕事をやってきた実績が評価していただけているんです。
一般的な施工会社さんだと施工図を外注しているところが多いのですが、瑞穂鋼建では外注に出さず図面を自社で作成しています。外部に委託していない分、人件費など固定費がかさむというリスクはありますが、人を育てる意味もありますし、それが瑞穂鋼建の強みだと思っているため、これからも自社完結型のスタイルは変わらずに貫いていきたいですね。
自社完結型で仕事をこなしていくことで、社員のやりがいにも繋がっていきます。社員一人ひとりが高いモチベーションで仕事に向き合うことが、ひいては会社の信頼力にも繋がっていくと考えています。
― 宮川社長が瑞穂鋼建に入社された経緯を教えてください
学生時代を経て別の建築関係の会社に就職し現場監督の仕事をしていたのですが、ある時、母から戻ってきてほしいと言われたことがきっかけで、26歳の時に瑞穂鋼建に入社することになりました。
父からは会社を継いでほしいと直接言われたことはなかったのですが、せっかく父が築き上げた会社なのだから、いずれは自分が継がなければならないという気持ちはありましたね。
父が会社を経営してくれていたおかげで子どもの頃から不自由なく生活することができてきたので、その生活基盤を作ってくれた親には感謝の気持ちしかありません。今だから言えることかもしれませんが、父が一生懸命築き上げてきた会社を、血を引いている自分が守らなければならないと自然に考えるようになってきたんです。
26歳で入社した直後は現場で一番下からスタートして徐々に認められるようになり、営業を任せてもらえるようになりました。社長の息子として入社しているので、組織の中でそういう目で見られることは当然ありましたが、現場の叩き上げからステップアップしてきたことで、後継者として認めてもらえる土台ができてきたと思います。
― どういったタイミングで代表を交代されましたか?
2009年に営業課長から専務になったことで、経営に対する意識が強くなってきました。立場が人を作るじゃないですが、専務というポジションに就いたことで色々な責任も出てきますし、取締役になった以上は自分の意見をドンドン出すようになりました。そうすると、父と経営に対する考え方でぶつかるようになるんですね(笑)。
親子だからということもありますが、父が昔の考え方ばかり言っているように思えて、相当激しく言い合いになったこともあります。ただ、会社を引き継いでいくためには自分の意思を示さなければならないと思い、「全てを任せてほしい」とハッキリと父に伝えました。
父との話し合いの結果、2014年、私が42歳のタイミングで代表を交代して二代目として就任することになりました。承継のタイミングを父に任せるのではなく自分から主張したのは、「誰のために」働いているのかを考えたためです。父親のために働くのではなく、お客様のために働かなくてはいけないと思ったんです。そう考えると、父親だからという理由で遠慮していてはいけないと思いました。
現在、父には会長職を務めてもらっていますが代表権は私に一本化しています。意思決定が別れていると指揮系統が混乱してしまって上手くいかないですからね。ただ、お客様のために責任を持って商品を提供しなければいけないという基本的な考え方は父と共通していると思っています。
― 二代目として承継されてから変えられたことはありますか?
先代の時代は経営者としての考え方や会社の方針をあまり明文化していませんでしたが、私が代表に就任してからは、毎年、経営方針を言葉にして発表し、それに向かって一年間取り組んでいくということを始めました。
今年で就任4年目になるのですが、初年度は「社員育成と顧客満足」、2年目は「法令順守」、3年目は「継続をし挑戦をし続ける」、4年目は「組織力でオンリーワン企業となる」という方針を掲げました。それぞれ毎年の決算時に一年を振り返り、現状の課題を整理して次年度の方針を決定するようにしています。
「継続をし挑戦をし続ける」という方針を掲げたのは、現状維持で満足しない組織にしていきたいと考えたためです。おかげさまで売上は右肩上がりに上がっていて単年度の売上目標も達成できたのですが、そこで満足しないでほしいというメッセージを込めました。私一人で売上目標を高く設定しただけでは誰もついてきませんから、組織全体で挑戦し続ける意識を高めていきたいんです。
― 組織づくりをかなり意識されているのですね
個で出来ることはたかが知れています。組織で取り組んでいかなければビジネスは上手くいきません。営業部、工事部、総務部の各部署がそれぞれの業務を徹底しながら、それらが一体的に機能することで大きな仕事に取り組むことができるんです。全員の協力なくして会社は成長できないと思っているので、組織力の強化が重点課題です。
先代の父はありとあらゆる仕事を自分でやってしまうようなタイプでしたが、私はある程度は社員に任せることが必要だと思っています。人に任せて成果を出すのは難しい部分もありますが、任せなければ成長することもありませんからね。
また、完全週休二日制にするなど働き方改革も少しずつ進めています。ただ、仕事はほどほどで休みが欲しいという社員もいれば、とことん働くから給料を上げてほしいという社員もいて、一人ひとり働き方に対する考え方はまちまちなので、定期的に個人面談を実施してそれぞれの意見を聞くようにしていますね。やはり小さい会社ですから社員たちには気持ちよく働いてほしいと思っているんです。
― 今後の展望を教えてください
幸いなことにお客様に恵まれて仕事の引き合いはどんどん増えてきています。ただ、限られた人員でやっているため若干オーバーフロー気味で、すぐにお引き受けすることが難しいケースも出てきています。そういった場合はお断りするのではなく、少し待っていただけるようお願いをしているような状態です。
人的なリソースも考えて売上の目標値を下げることも検討したのですが、そこで立ち止まってしまうと会社の成長も止まってしまうため、できるところまではやろうと決めました。ご依頼いただく仕事に応えて売上を上げていくためには、人を増やしていくしかありません。人はすぐには育たないので、今一番の課題は人材育成です。
将来的な目標としては数値的なものよりも、あくまでも瑞穂鋼建を継続させていくことが一番ですね。そのためには、既存の事業にこだわらず、時代に合ったビジネスモデルを考え出していかなければならないと思っています。
現在のビジネスと全く関係ないところに挑戦しても上手くはいかないと思うので、得意分野を活かした新しい視点の市場開拓や、核となる事業から枝分かれするビジネスには取り組んでいきたいですね。
<インタビュー情報>
株式会社瑞穂鋼建
代表取締役 宮川 毅彦
会社ホームページ http://www.mizuhokohken.co.jp/