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経営者ストーリー

本当にお客様のことを考えて“通わせない整体”を【無痛整体 鍼灸治療院 樹庵】

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事業を継承して、「これから」をどうしていくか

――先ほどお兄様と2人でスクールを継いだお話がありましたが、事業承継はどのように行われたのですか

事業承継は、僕が新潟に戻った後ですね。恥ずかしい話なのですが、現場経験を積んで僕にもある程度自信がついてきて、いろいろ意見が出せるようになりました。もっとこうすればいいのに、もっとああすればいいのにって。兄も同じだったようです。そんな僕たちの理想像と現実の父を比較してしまい、いろいろ父に対して発言していたんですね。まさに、若さゆえの驕りです。父は僕たちの言うことを聞いてくれました。指摘の通りにやってくれたりして。でも、その姿にも違和感があるんです。こんなの父じゃないって。

そしてある時、気がつきました。自分たちが勝手な理想像を父に押し付けて、これまで自由にやってきた父の個性を潰してしまっていることに。言い訳をさせてもらうと、小さいころから尊敬してきた父ですから、ずっと僕たちの前を歩くカッコイイ父であって欲しかったという思いがあったのだと思います。でも、単に僕たちが安全なところから理想論だけ振りかざしていただけだったんですよ。いい歳をした大人がいつまで父親に頼っているんだという話ですよね。

それで兄と話しまして、「僕たちがやればいいじゃん!」ということになりました。今まで父が受け止めてくれていた責任を僕たちの世代が受け止めて、僕たちがやりたいことをやっていけばいいだけ。必要だったのは、僕たちの覚悟だったと気がついたんです。

その話を僕たちから父に話した時、父は静かに「分かった」と言いました。その時、父から言われたことが、また父らしいというか、さすが父だなと思える内容でした。「俺が作った整体院やスクールを残してほしいとは思っていない。ただ、整体院やスクールに関わった人たちが迷ったり孤立しないようにサポートしてほしい」。お客様のことを本当に大切に考えていて、自分たちの仕事の本質を見据えている人だと思いました。
 

――事業継承してみて、実際のところ、いかがでしたか

やっぱり、言うのとやるのは違いますね。経営の難しさを実感しました。私の整体院事業ではずっと赤字経営が続いていましたから。焦りはずっと感じていましたね。いろいろ手探りで試行錯誤する日々が続いていました。

転機になったのは、神田昌典さんの『クチコミ伝染病』という本と出会ったことですね。これで、ダイレクトレスポンスマーケティングという分野を知って。自分たちの仕事に取り入れてみました。父の代だとお店探しや予約受付は電話帳や電話というアナログ方式でしたけど、今はデジタルが主流じゃないですか。整体院のホームページつくって、予約もネットで行なえる仕組みを整えて、クチコミを上手く活用できるように工夫しました。その結果、今では黒字経営に回復させることができています。
 

――すごいですね。いろいろ新しいことに取り組まれていらっしゃるようですが、今後やっていきたいことの展望はございますか?

スクールの事業展開としては、今、日本全国の各地に出向いて研修をやっていますが、講師の数が限られていますから、できることが限られているんですよね。これをデジタルで解決できないかと模索しています。

ネット上に講義動画をアップして、いつでも誰でも見られるようにしたり。SNSを活用して全国の生徒のフォローを行なったり。これまでのスクールの良さを活かしながら、より多くの人たちに教えていけるような仕組みを作りたいですね。でもやっぱり、技術的なところは直接手取り足取り教える必要がありますし、SNSを使った集客方法を講義に取り入れたり、考えていかなければならないことはたくさんあります。

大切にしなければならないのは、講義内容のカスタマイズ部分です。なりたい未来が人によって違いますから。自宅開業でプライベートサロンみたいにしたい人、路面に店を構えてガッとやりたい人、それぞれの環境で上手くやっていく方法は違いますからね。今までは研修が終わった後に、プラスアルファとして個々の相談に乗る時間を取っていたのですが、デジタル化したとき、このような面をどうやってフォローしていくかも課題です。
 

――最後の質問になるのですが、剣持さんは今後どのような思いを持って、この仕事をつづけていきたいとお考えでしょうか

整体という業界は、上手くいく人とそうでない人との二極化が更に進んでいくと見ています。その境は、Webやデジタルツールへの対応はモチロンですが、施術をサービス業と考えられるかどうか、ではないでしょうか。

先生と呼ばれるお仕事をしていると、どうしても「立場」を勘違いしてしまい、一方的に指導する・指摘すると言った態度を取ってしまうお店も少なくありません。あくまでも施術院はサービス業であり、お客様とは上下関係では無く対等であるべきなのです。そこを間違えてしまい、脅かす・怖がらせるといった事例も時にお客様からご相談いただききます。

また、技術的なテーマでお話しすると、もんだり叩いたりするのはマッサージ師の仕事なんです。整体は足首を回したり関節を揺らしたり筋肉をちょっと緩めるだけのものなので、もんだり叩いたりはしません。本来、国家資格がないとできないのです。でも、明確に線引きできないですよね。そういう法律的にグレーな部分はあります。

資格の有無や施術内容について不透明な部分が多いからこそ、お客様はどういう治療院なのかを知るため、クチコミをよく閲覧され、顧客サービスを大切にしているところや仕事内容に誠意や理念を感じる院や先生にお客様が集まっていく流れになるのではないでしょうか。

この仕事は痛みに苦しんでいる人たちを救ういい仕事だと思います。だからこそ、お客様にきちんと向き合っている整体師には営業が上手くいってほしいと思います。そういう治療院が増えることが日本を良くすることに繋がるんじゃないでしょうか。まじめに取り組んでいる人たちが、自分たちの仕事に誇りを持てるように、そのためにいろいろな角度から支援していくことが、僕の使命だと考えています。
 

無痛整体 鍼灸治療院 樹庵
代表:院長 剣持 樹
所在地:新潟県村上市三之町9-36
URL: https://juanseitai.com/