従業員の物心両面の幸福の追求と社会貢献
【株式会社東洋堂】
株式会社東洋堂
代表取締役 松森 武夫 氏のインタビュー
いまや街中ではんこ屋さんを見かけることは珍しくありません。しかし、『はんこ広場』は、よくあるはんこ屋さんとは異なり、「待ち」ではなく、「攻め」の営業サポート体制が整えられているとのこと。今回ご紹介するのは、日本のはんこ屋ビジネスの常識に挑戦している、株式会社東洋堂 代表取締役 松森 武夫 氏のストーリーです。
――それでは最初に、株式会社東洋堂という会社について、読者のみなさんに自社紹介をお願いします
弊社は印鑑印刷専門店『はんこ広場』を運営している会社です。フランチャイズ展開を行ない、現在、日本全国に100店舗を展開するまでになりました。
『はんこ広場』の特長は、「店舗で待つだけの仕事」ではないというところ。本部が営業機能を持っており、店舗のあるエリアの官公庁や企業に働きかけ、チラシの配布、食堂やオフィスの一角での展示販売ができます。いわば、「攻め」のサポートが整っていることが、フランチャイズ加盟店からの支持が多い理由です。
企業のいきさつは、学生時代にはんこ屋でアルバイトしていたことです。社会人になってからはんこ屋に営業として勤め、粗利率の高い商売という点に面白さを感じ、「自分でやってみよう」と思い立ちました。はんこって、運転免許証・婚姻届・銀行等口座開設など、生活に欠かせない絶対必需品です。取り引き先の一社で社内販売を任せていただく機会を得たことがキッカケでその優位性を知り、独自の販売スタイルが出来上がりました。
――御社のビジネス上の強み、仕事でこだわっているところは、どんなところでしょうか
本部が、官公庁、大企業の職域ルートを開拓している点ですね。外販ビジネスは、どの企業にもできるものではありません。弊社の永年の実績があるから開拓できるのです。このシステムを活用することで、官公庁や大手企業の「指定業者」になることができ、定期的に出向いて、チラシの配布、食堂やオフィスの一角で展示販売ができます。同業他社にはないアドバンテージですね。
また、官公庁指定というお墨付きをいただけています。今年の5月場所、新たに設けた「米国大統領杯」でトランプ大統領が朝乃山関に渡した表彰状の印刷は、実は弊社の仕事です。経産省からの推薦で、お任せいただくことになりました。また、フジテレビの番組企画でレアルマドリードの選手全員にはんこを作るというものがあったのですが、このはんこは私たちが作りました。特にベッカムは喜んでくれて、そのはんこを今でも使ってくれていると聞いています。
このような大舞台での仕事を任せていただける信頼があり、その実績がまた新しい信頼を形作っていく。この連鎖が私たちの強みです。
――仕事のこだわりは、経営理念にも通じていると思うのですが、そのあたりのお話を聞かせていただけますか
経営理念は、「従業員の物心両面の幸福の追求と社会貢献」です。作る仕事は、作り手にプライドがあるべきですが、自己満足になってはいけません。お客様があっての商売ですから、売れるものを作らなければならないと考えています。すべてを潤すには、やっぱり売上が欠かせませんからね。
はんこは生活していくうえで、どこかのタイミングで必ず作ることになるものです。でも、わざわざお店を探して作りに行くのは面倒くさい。名刺も、バッジも、賞状の印刷も、同じです。
私たちの商売は、お客様から求められているものを提供しており、それが自分たちを潤すことに繋がっている。これは、起業して必死に飛び込み営業をしていた経験から学んだ商売の極意のようなものです。それを忘れないように、経営理念としています。
――最後になるのですが、御社の「これから」について、教えていただけますか
はんこは日本独自のもので、「日本でしか売れない」というのが定説となっています。しかし、本当にそうでしょうか。はんこの発祥はメソポタミアといわれており、その後、文化がさまざまな地域に伝わるとともに、はんこも広まりました。
しかし、ヨーロッパでは国王や貴族といった一部の人たちにしか流通しなかったんです。歴史の中で戦争が多かった国では、日本のように署名&捺印という文化が育たなかったんでしょうね。大切なのは、はんこは日本独自のものじゃなくて、世界にも存在し、使われていたということです。
今はアプリも二重認証が当たり前になっています。署名&捺印もWチェックですよね。アナログへの回帰需要もあり、日本文化の世界への浸透も進んでいる中、はんこ文化が世界に広がっていくこともあり得るんじゃないでしょうか。
絵空事に聞こえるかもしれませんが、すでに私たちは展開し始めています。株式会社東洋堂としては、今後は海外進出にも力を入れていくつもりです。
株式会社東洋堂 代表: 代表取締役 松森 武夫 設立: 1981年6月 所在地:〒110-0005 東京都台東区上野3丁目17-9 URL: http://hankohiroba.com/ |