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経営者ストーリー

子どもからお年寄りまでみんなを笑顔にします【株式会社マルサ斉藤ゴム】

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笑顔をつくるものづくりを

――今、お話に出てきた経営理念について、教えてください

「子どもからお年寄りまでみんなを笑顔にします」、ですね。

この言葉には助けられました。 社長になってすぐ、経営について学ばなければならないと思って、墨田区の事業である後継者育成のための『フロンティアすみだ塾』に通って勉強していた時のことです。主力マーケットのことを考えていたとき、ゴム風船のメイン顧客にある子どもが年々減少している事実に気がつきました。経営は赤字だし、売上も下がっているし、買ってくれる子どもたちも減っている。お先真っ暗ですよ。どうしたものかと悩んでいた2009年12月の営業最終日。1本の電話がかかってきました。

それは問い合わせの電話だったんですね。「“さ”にマルという印がついた風船は、そちらが製造しているものか?」。間違いなく弊社商品でした。それを売ってほしいという話だったんですね。とはいえ、ゴム風船なんてどれも同じでしょう。なんでウチのものなんだろう?と聞いてみると、一般的に市販されているものより、ゴムが厚くて、風船が重く、まん丸に膨らむ。銚子で作っている手づくりゴム風船のことでした。

「一体、何に使われているんだろう」と不思議に思って、使われている現場を見せてもらうことにしたんですね。そしたら、練習が1月の頭にあるというので、行ってみたんです。 そこで繰り広げられていたのが、高齢者たちによる「ふうせんバレーボール」という競技だったんです。

バレーボールだと危ないので、風船を使って、バトミントンのコートで行なうバレーボールなんですね。衝撃的でしたよ。おじいちゃん、おばあちゃんたちが、風船を相手にめっちゃ真剣になって、すごく楽しそうに遊んでいるんです。そのとき、パッカーンと何かがはじけたというか、自分がいかに狭い中で物事を考えていたか思い知るとともに、ひらめきを得ました。

「風船=子どものもの」なんて誰が決めた。新しい使い方を提案すれば、ターゲットを子どもに絞らなくても遊んでもらえるものなんです。だって、風船が嫌いな人ってあまりいないじゃないですか。風船って、笑顔を作るものじゃないですか。それでいいんだ。そう思った時、赤字の会社を背負って大変だったんですけど、スッと自分が進むべき道が見えた気がしたんです。この発想が、『marusa balloon』シリーズの誕生にも繋がっていきます。

 

――たった今、お話に出てきた『marusa balloon』シリーズの制作秘話について、くわしくお聞きしてもよろしいですか

2011年のことですね。「墨田区はものづくりの街」ということを全面的に押し出していこうと、墨田区の町工場とクリエイターさんがコラボレーションして、 B to Cの商品を作ろうというプロジェクトがありました。私たちもあるデザイナーさんと一緒に新商品のアイデアを考えていたときのことです。

デザイナーさんから、こんなこと言われました。「三角のピラミッドとか、四角いサイコロみたいな風船って、できないものですか?」。できるんですよ。でも、作っても膨らませてしまうと、みんな丸になってしまいます。「なるほど。でも、1回作ってみませんか」と言われたので、答えは分かっていたのですが、試しに作ってみたんですね。そして、空気を入れてみました。やっぱり膨らませると、みんな丸くなってしまいます。やっぱりこうなってしまいますねと、私が話すと、デザイナーさんが言うんです。「めいっぱい膨らませなくていいんじゃないですか」って。

これ、私は目からウロコだったんですね。「風船とは、めいっぱい膨らませるもの」と思い込んでいたんです。でも、めいっぱい膨らませないことで、風船はいろいろなカタチをつくることができました。ネコとか、イヌとか、ブタとか、ウサギとか、いろいろな動物が風船から生まれたんです。見た人が思わず笑顔になってしまうような、見たこともない新しい商品がそこにはありました。

そう、また「笑顔」です。そして、自分たちだけでは『marusa balloon』シリーズは生まれなかったでしょう。「新しい視点があれば、風船はまだまだ必要とされるものになる」と確信することができました。
 

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