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自ら生活を彩る文化をシールで広める【株式会社 扶桑】

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株式会社 扶桑

取締役 富田 成昭 氏のインタビュー

創業から55年、シール専門会社として時代の変化や顧客のニーズに合わせて新しい価値を生み出してきた株式会社扶桑。あらゆる素材にアイロンなしで貼ることができる特殊な転写シールを開発し、ユーザー自らが生地をデコレーションするという新しい発想の商品を世に送り出した富田成昭取締役に、会社への想いや今後の目標についてお話しいただきました。

生活を彩る文化を広める

― はじめに、主な事業について教えてください

株式会社扶桑は、1964年創業のシール専門会社です。いわゆる転写シールといわれる特殊なシールをメインで取り扱っています。以前は、自転車のフレームやヘルメットなど工業製品用のシールを主に製造していました。しかし、自転車本体の製造が中国をはじめとした海外へ移転するにつれて、転写シールの製造も海外へ移行してしまい、生産量が激減することに。

一時期は売上げの8~9割を自転車関係が占めていましたが、時代の移り変わりとともにキャラクターシールなどファンシー関連の商品開発にシフトすることで活路を見出してきました。自転車向けシールからファンシー路線に切り替えたことが大きな転換点となったと思います。以来、お客様からのご要望に応じる形で、様々な商品開発を手がけてきました。

積み重ねてきた経験・技術を活かして、現在は、“irodo”(イロド)という生地素材にアイロン不要で貼ることができるファブリックステッカーを開発し、自社商品として一般消費者向けに提供しています。綿や麻、革など様々な素材にアイロンを使うことなく、こするだけでシールを転写できるのがirodoの最大の特徴。お子様からご高齢の方まで安心してデコレーションを楽しんでいただけます。

irodoという商品名は「彩る」という言葉からきています。ポーチやバッグ、手帳カバーといった生地製品を、シールでカスタマイズすることで生活を彩る楽しさを伝えていきたい。そういう願いを込めているんです。一過性のブームではなく生地製品をデコレーションするという一つの文化を広めていきたいと思っています。

― irodoを商品化されるまでの経緯を教えてください

きっかけは、東京都と日本デザイン振興会が主催する2017年度の東京ビジネスデザインアワードに、「あらゆる生地素材にアイロン無しで貼れる特殊転写技術」をテーマに応募させていただいたこと。技術力に自信はあったものの、それを商品に落とし込むことができていなかったので、扶桑の持っている技術を広める機会になればと思っての参加でした。

東京ビジネスデザインアワードは、都内のものづくり企業が持つ技術や素材とデザイナーをマッチングすることで新しいビジネスの創出を目的としたコンペティション。そこで、我々の特殊転写技術に対して、株式会社Good The Whatの榊原美歩さんが生地をデコレーションするパターンシートを提案してくださり、結果として最優秀賞を頂くことができたんです。

扶桑の技術が秘めている素晴らしい可能性に気づくことができた瞬間でした。素晴らしいデザイナーと組ませていただくことによって、特殊転写技術を商品に落とし込むことができると確信したんです。2018年3月よりブランド化を進め、テストマーケティングやクラウドファンディングによる資金調達を経て、同年10月29日にirodoを商品化することができました。

現在はデザインを100種類まで増やすことを目指しており、生地にアイロンなしで貼れるファブリックステッカーというジャンル=irodoを確立したいと思っています。今後、競合製品が出てくることも見越して、デザインを増やすのに加え、コンテストへの出品やワークショップの開催などirodoの魅力を広めるために草の根的な活動に力を入れているところです。

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